前回、産婦人科の選び方を記載しました。
今回は無痛分娩とは何かを、妊婦さんにわかりやすく解説していきたいと思います。
実際に私の妻は無痛分娩を行っており、その時の体験も含めて記事にしていきたいと思います。
痛みを伴うメリットは??
無痛分娩とは、局所麻酔で陣痛に伴う痛みを和らげ、出産時の疲労を軽くする出産法です。産後の回復が早いなどのメリットから、
フランスでは妊婦の6割以上、アメリカでも4割以上が無痛分娩
を行っています。日本でも無痛分娩を選ぶ妊婦が増えており、実施率は07年の2.6%から16年には6.1%になっています。日本では、痛みを伴って出産することに美学が残っている
印象があります。痛みを伴うメリットはなんでしょう?
はじめに
お腹の中の赤ちゃんの状態にもよりけりですが、出産には自然分娩・無痛分娩・帝王切開など様々な形態があります。胎盤の位置や赤ちゃんの位置が正常であれば、お産の方法を選択することが出来ます。
決断をするうえで、重要視されているのは、実際の体験談やネットでの書き込みなどが多く、治療の選択をするうえでの材料となっていると言えるでしょう。
今回、私の友人が産婦人科医であり、実際に無痛分娩を行いました。無痛分娩に対して様々な、疑問や不安を抱く妊婦さんも多くいると思います。
少しでも、妊婦さんの不安が軽減でき、出産の選択方法の1つになれば良いと思います。
分娩とは
分娩は3段階に分けられます。
第一期:陣痛開始から、子宮口(子宮の出口)が完全に開くまでの期間。約10cmと言われています。
第二期:子宮口が完全に開いてから赤ちゃんが生まれるまでの期間。赤ちゃんが産道を通っている間です。
第三期:胎盤が出てくるまでの期間です。
お産の痛み
一定の間隔で起こる下腹部の収縮・子宮の収縮や子宮口が徐々に開いて引き伸ばされることによって痛みが生じます。
痛みの刺激は子宮周辺にある神経を介して脊髄(背骨の中)の神経に伝わり、それが脳に伝わることで痛みとして認識されます。
簡単に説明すると、お腹の痛みは背骨の神経を通って、痛みとして認識されるということです。
私の妻は「何かに掴まっていないと耐えられないような痛みで、額に汗をかくほどの痛み。内臓が捻じ曲げられているような感じ。」と言っていました。
無痛分娩
一般的に痛みを和らげる方法には、点滴と硬膜外麻酔があげられます。
硬膜外麻酔
硬膜外麻酔は陣痛が始まってから、医師の判断で行います。
私の妻の場合は、割と早期の段階で、処置室に行き、硬膜外カテーテル(背骨(脊柱)にいれる管)を挿入していました。
やり方は、自分のおへそを見るようにして、なるべく丸くなります。私は手術中によく「おへそを見るような感じでエビのように丸くなってくださいね。」っと患者さんには説明をしていました。
腰の骨の間に針を入れるので、なるべく丸くなることで針の入るスペースを作ることが重要です。丸くなったら、皮膚に麻酔薬を打ちます。かなり細い針なので、大した痛みはありません。皮膚の麻酔が済むと、カテーテル(管)を入れるための太い針を刺します。この時は麻酔が効いているので、腰をグッと押される感触があるだけです。
この針伝いに直径僅か1mm弱の細い管を硬膜外腔に留置し、この管を通じて局所麻酔薬などの鎮痛薬を注入することによって、末梢神経からの刺激伝達を遮断し、痛みを緩和するというものです。
これは医師の技量を要するものです。極まれに、針が少し深く入って、硬膜に穴が空いた時、髄液が漏れて、脳圧が低下し、頭痛が起こります。
100症例に1例くらいと言われており、頭痛が症じることがありますが、数日から1週間ほどで良くなることがほとんどです。
昔は点滴や水分摂取を積極的にさせていましたが、最近では、水分摂取による排尿回数が増え、その度に頭を上げるため頭痛を誘発し、むしろ有害とされています。痛み止めを服用する場合もあります。頭痛や吐き気が良くならない、物が二重に見えるなどの症状が見られた場合、再度、背中に注射して硬膜外腔に自分の血液を注入する(ブラッドパッチ)治療が必要になることもあります。
危険なのは、硬膜を貫いていることに気が付かずに、カテーテルを入れ、持続した麻酔薬を入れてしまうということです。最近でも、硬膜を貫いて麻酔薬を投与したことによる死亡事故が起きています。
医師の技術が必要な手技だということを、わかっていただけたと思います。
その後はNST(ノンストレステスト/胎児心拍数モニタリング)で陣痛の周期が短くなり、妻が、痛みを感じた時点で、先生が病室に来てくれて、「こんなに我慢しなくよかったのに。ごめんね、痛かったね。すぐに痛みをとるからね。」といって処置室に運ばれて行きました。陣痛を少し経験してみたいという妻の希望もありましたので、私たちは少し経過を見ましたが、もっと早い段階で、痛みをコントロールすることも可能です。
PCEAとは
私の妻は、自己調整硬膜外鎮痛を行いました。自己調節硬膜外鎮痛は英語でPatient Controlled Epidural Analgesiaと呼ばれ、一般にPCEAと略されます。
硬膜外無痛分娩開始後に痛みを感じたときに、妊婦さん自身が硬膜外腔への痛み止めを追加投与できる画期的な鎮痛法です。
硬膜外腔に入っている管にはポンプが接続され、そのポンプを妊婦さん自身がボタン操作をして薬を注入できるようになっています。 妊婦さんがそのボタンを押せば硬膜外腔に追加の薬が注入されるというわけです。投与できる薬の量は自動的に制限されるしくみになっていますので、ボタンを押しすぎても使いすぎる心配はないそうです。
PCEAは鎮痛薬の使用量が少なく、足の力が保たれやすいともいわれています。 またお母さんや赤ちゃんへの副作用が増えることもありません。 自分でコントロールすることが出来るので妊婦さんにとっては、とても都合の良いシステムと言えるでしょう。PCEAを適正に使用するためには、専門知識を持った医師や助産師・看護師が必要になってきます。
適切な方法で使用すれば鬼に金棒ですが、不適切な使用が行われれば諸刃の剣となりうるシステムになります。高度な麻酔技術が必要になることがご理解いただけたと思います。
~おわりに~
硬膜外カテーテルについて、イメージが付いたのではないでしょうか?私の妻は、無痛分娩を行いました。不必要な痛みを感じることなく、出産後の予後も良かったため、第2子も無痛分娩での出産を予定しています。
第一子の出産は、私の友人である医師が、麻酔科としての経験を積んだ後、産婦人科医となったこともあり、安心して全てを任せることが出来ました。
この経験が少しでも多くの妊婦さんの手助けになればと思っています。
次回は私がお勧めする医師について記事を書きたいと思います。
coming soon!!